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今回はトリノ派のモダン製作者、アンセルモ・カルレット(1888‐1973)をご紹介いたします。

生い立ち

20歳頃からのトリノ派の製作者エンリコ・マルケッティに弟子入りし、マルケッティが引退するまで門下で働き続けた。そして独立後も、生涯トリノを離れることはなかった。

写真は19世紀後半のトリノ市街地。

作風について

マルケッティから習った楽器モデルを基本としており、大型の堂々としたプロポーションである。時にプレッセンダロッカガダニーニなどトリノ派の名器のモデルを用いた製作も行っていた。

パフリングに沿ったフチ回り仕上げ方は非常に彫が深く、あたかもミラノ派を彷彿とさせるデザインである。これは師匠マルケッティがミラノ出身で、はじめ5年間はミラノ派メーカーのもとで弦製作の基礎を学んでいたことが大きく影響していると考えられる。一度習得した木工技術は製作地が変わっても、多くの場合そのままである。こうした理由により、師匠を通じてミラノ派の要素がカルレットに伝わったとしても不思議ではない。

楽器のモデル

本作品は1964年トリノ製のチェロである。この楽器は1834年製G.F.プレッセンダをモデルにしており、自身のラベルと、プレッセンダのレプリカラベルの2枚が添付されている。

豊かなふくらみを持ったアーチが特徴的なチェロである。モダンイタリアンらしい明るく大きな音量を持ち、高音域に独特の甘い音色を備えている。コンサートホールでも遠鳴りする、ソリスト向けの楽器である。

焼き印

カルレットは何種類かのラベルを製作しており、時期によってラベルのデザインが異なっている事がある。

しかし、彼の作品はエンドピンの付近ペグボックスの内側楽器内部など数か所に焼印が押されている。その為、コピー品との見分けが比較的容易である。

製作上の功績

19世紀イタリアはムッソリーニの台頭により国粋主義が盛んとなった。この時期、伝統産業であるバイオリン製作も復興運動が進み、国内各地で展示会や製作コンクールが開催されるようになった。 

当時クレモナはバイオリン製作のメソッドが殆ど失われてしまっていた。20世紀にかけてクレモナがバイオリン製作の街として再興した背景には、ミラノ、ボローニャ、そしてトリノの製作者らの活動が大きく影響している。

特にトリノはメーカーの多様性に富んでおり、カルレットファニオラミケッティなどルーツの異なる製作者たちが、互いに影響し合いながら独自のスタイルを形成していったことは、非常に興味深いことである。

次回からは番外編として、イギリスにおけるバイオリン製作の歴史を取り上げます。