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女性製作家の時代「陳 由木子」

3年前、クレモナの弦楽器製作コンクールでヴァイオリン部門2位ならびに音響賞を獲得した陳由木子は、日本人弦楽器製作家として活躍する女性の一人だ。
―弦楽器製作者を志したきっかけを教えてください。

「私は製作家になるというよりは、楽器屋さんに行く機会があった時に『ここの裏方になりたい』と思って、そのまま学校に入り、働き始めたという感じですね。あまり迷わなかった。それまでは将来の目標などがなかったので、お店で見て『ここがいい』と思ったのでこの業界に入りました」

大学卒業の1988年は、日本で初めての弦楽器製作学校だった東京ヴァイオリン製作学校が生徒を募集していた時期と重なった。

「東京ヴァイオリン製作学校がちょうど生徒を募集していたので入学しました。卒業する頃に、先輩の陳宇さんが会社を立ち上げ、そのタイミングでスカウトされたので、就職を決めました」

就職後、陳はイタリアに定期的に渡り、製作を学ぶ機会を得た。日本で学んだドイツ式の製作だけではなく、イタリアの楽器製作をも身に着けていった。
―イタリアで学んだ際、一番大きな発見は何でしたか?

「ドイツ式の作り方や修理などを学んだ後だったので、イタリアの工房に入って、改めて楽器の美しさ、イタリア人の美意識を感じたことが、カルチャーショックというか、一番大きかったと思います。最初は全然きれいと思っていなかったんですけど。具体的には、ネックの渦巻きの所のデザインやラインなどにマエストロがこだわっていて、とても厳しかった。音に関係ないのにこだわるんです」

日本とイタリアを行き来する期間を経て、双方の良さを感じているのだが、イタリアで製作に集中する日々は、製作活動の上で欠かせないものだった。

「クレモナでは製作が学べるし、道具や材料の仕入れも便利だしで言うこと無しですね。今後は日本でも製作をするために良い環境を作っていけたらと思っています」
陳 由木子(ちん ゆきこ)
1964年福岡県生まれ。1984年明治大学法学部入学。1988年東京ヴァイオリン製作学校入学。1992年弦楽器トリオ株式会社に就職。2001年修理の仕事をしながらクレモナの工房に1年に2回のペースで通い続ける。2006年ポーランドの国際コンクールで11位入賞合わせてニスの賞を受賞。2018年にイタリアのトリエンナーレでヴァイオリン部門で2位、合わせて音響賞を受賞。
取材・文 安田真子